Lifestyles and Traditions 隠岐特有の文化・伝承・芸能

さまざまな地域の文化が流入しながらも、離島ならではの独特の文化が形成された隠岐。
たとえば、2番勝負で一勝一敗とする「隠岐古典相撲」は、狭い島内で共存していくためのひとつの手法でもありました。
本州や他の地域では失われてしまった隠岐特有の文化、伝承、芸能を紹介します。

今も伝える縄文信仰

隠岐の風景の中には、宗教のルーツを感じさせるような場所もあります。
日本固有の宗教である神道のルーツとされる自然信仰(山岳信仰や巨木信仰)の形を現在に伝えるような祭りや神社があります。

大山神社

島後布施地区の大山神社には社殿がなく、鳥居をくぐるとご神体である樹齢400年の杉の大木があり、一山全体が神社として祀られています。
その杉の巨木にカズラ(サルナシのつた)を七回り半巻き付ける神事は、恵みを与えてくれる山や自然に対しての感謝の証であり、これから始まる山仕事での安全祈願と子孫繁栄を願うためであるとも考えられています。

岩倉神社

大山神社の近くにある、隠岐の三大杉としても知られている乳房杉も巨木信仰の対象であり、社殿のない岩倉神社のご神体となっています。

御客神社

銚子地区にある御客神社も大山神社や岩倉神社と同様に社殿がなく、巨岩に注連縄を張りその前に鳥居を建てています。

伝統芸能

かつては日本各地で見られた祭り。隠岐にも伝えられたこうした祭りは、古い形を残したまま現在も隠岐の各地で行われています。

御霊会風流

隠岐の総社、玉若酢命神社。毎年6月5日に行われる「御霊会風流」では、島後の8地域からそれぞれの氏神様を乗せた神馬しんめが集まり、境内を駆け上 がる勇壮な馬入れ神事が行われます。国府があったこの場所に、各集落の代表者が集まる行事だったものが、今日行われているような神事になったものと考えられています。

蓮華会舞

奈良時代の宮廷舞踊の面影を残す隠岐国分寺蓮華会舞には、中国や東南アジア、インドなどがルーツと思われる面を付けた舞も受け継がれています。

武良祭風流むらまつりふりゅう

鎌倉時代に伝わったとされる陰陽道の祭り、武良祭風流むらまつりふりゅう。太陽の神と月の神が祭り場で出会い、円を描くように3回半回りながら神事を行います。当時、最先端だった暦の知識が隠岐にも伝わったことを物語ります。

久見神楽

神楽と言えばヤマタノオロチ退治で知られる出雲地方神楽が有名ですが、隠岐にも神楽が伝わっています。隠岐の神楽の場合は、「社家」と呼ばれる神楽専門の人々によって受け継がれてきたことや、畳2畳分の広さの中で舞われる「祈祷の神楽」として伝えられていることから巫女が重要な役割を果たしているなどの特徴があります。

シャーラ船(精霊舟)

隠岐では独自の姿にかわり西ノ島町で受け継がれています。中でも西ノ島の美田地区のシャーラ船は形も大き く、藁と木で作られた船が経文の書かれた色とりどりの色紙で飾られ、供え物とともに子どもが乗り込み祖先の霊を送る珍しいものです。

隠岐古典相撲

隠岐では、神社の屋根の葺き替えや町の記念事業、大型公共事業の竣工を記念して、「古典相撲」と呼ばれる夜を徹しての相撲大会が行われます。古典相撲という呼び名は新しく、元々は神への奉納相撲「宮相撲」として行われていました。

隠岐の古典相撲の特徴

  • 神社の遷宮や大型公共事業の完成記念として開催する

  • 夜を徹して行われる(夕方から始まり、終わるのが次の日の午後)

  • 大きな大会では力士が200人以上参加する

  • 取り組みは、割り相撲、五人抜きなど300番近く行われる

  • 最高位が大関である(相撲では元々横綱という地位はなく、隠岐は古い形を残して行われる)

  • 二番勝負で行われる(1番目の勝者は2番目に勝ちを譲る)

  • 役力士のうち、大関、関脇には、栄誉の品として土俵の柱が贈られ、 小結には、柱を繋ぐぬきが贈られる

  • 神社の遷宮記念の大会では、三重の土俵で行われる(通常の土俵の上に、鏡餅のように二段の土俵を重ねる)

夜通しおこなわれる相撲大会
奉納相撲の三重の土俵
賞品の柱に乗って凱旋

牛突き

隠岐の牛突きは、都での権力争いに敗れ、1221年に承久の乱に敗れて隠岐に御配流となった後鳥羽天皇が、小牛が角を突き合わせてる姿を見て喜んだということから始まったといわれています。
この牛突きは今でも島の人々の楽しみとして伝えられているとともに、後鳥羽天皇のお言葉により、隠岐の闘牛は綱をつけたまま取り組みが行われています。

隠岐の牛突き
突き牛の土俵入り

時期

  • 初場所牛突き大会(1月第2日曜/隠岐モーモードーム)
  • しゃくなげ祭り牛突き大会(5月4日/隠岐モーモードーム)
  • 夏場所牛突き大会(8月15日/隠岐モーモードーム)
  • 八朔牛突き大会(9月1日/佐山牛突き場)
  • 一夜ヶ嶽牛突き大会(10月13日/一夜嶽牛突き場)
  • 上西神社奉納牛突き大会(11月13日/上西神社牛突き場)

※この他にも隠岐モーモードーム(隠岐国分寺となり)では、伝統文化である牛突きを「観光牛突き」として実施しています。詳しくは隠岐の島町観光協会へ。