2025.06.06
【報告】ジオメガネをかけて歩く海士町 金光山編
海士町Entôジオラウンジを会場に2025年4月15日(火)〜5月18日(日)にかけて、企画展「ジオメガネをかけて歩く海士町 金光山編」を開催しました。「Entôジオラウンジを起点として現地に行ってみて感じてもらう」という展示室Geo Room Discoverのコンセプトに合わせて、企画展を見ることで実際に現地に行きたいと思っていただくのが狙いでした。
・開催期間中の来館者数:309名
・開催場所:Entôジオラウンジ(海士町)
金光寺山は海士町の北東に位置する標高約160mの低山です。このエリアは、ジオパークのテーマである「大地の成り立ち」「独自の生態系」「人の営み」についての要素が含まれる、ジオパーク的価値の高い場所となっております。本企画展は、海士町でこれまで取り上げていなかったジオパークサイトの要素について、地質だけでなく生態系も踏まえた魅力を島内外の来館者に紹介しました。
金光寺山と歴史文化
海士町に島流しされた小野篁(おののたかむら)や後鳥羽上皇は金光寺山でどのような時を過ごされたと考えられるのか、絵画や和歌を用いて紹介しました。小野篁は平安時代に、後鳥羽上皇は鎌倉時代と、時代は違いますが隠岐で和歌を詠まれています。また、海士町出身の画家である広瀬貫川さんの描いた小野篁の大きな絵画も展示しました。
金光寺山の成り立ち
島前地域の原型となる山が完成した後に起こった噴火により金光寺山はできました。大きな火山の側面に付随して生じた火山を寄生火山とよび、これは隠岐全体に多く見られます。金光寺山を構成している岩石である玄武岩と粗面岩を展示することで、噴火によってつくられた大地であることを感じられるポイントとなりました。
隠岐の自然
海士町は約600万年前に火山の噴火で誕生した島ですが、何度も本土と陸続きとなった地史があります。陸続きとなったことで本土から隠岐へ生き物たちが移動することができ、さまざまな地域で分布する植物や隠岐独自で進化した固有種が見られる現在の生態系につながるということを伝える展示でした。
金光寺山で見られる自然には、特に野鳥や植物に特徴があります。隠岐は渡り鳥の経由地であり羽を休ませる場所となっています。そのため金光寺山周辺では一年中みられる野鳥のほか、季節によって見られる渡り鳥がいます。島前3島のうち海士町の中でも北東側に位置する金光寺山は、南から北の地方に移動する春の渡りの時期に鳥が集まりやすいポイントの一つとなっています。
また、隠岐では北方系、南方系、大陸系、固有種と様々な地域に分布する植物が見られます。例えば、北海道のような寒い地域で見られるエゾイタヤというカエデの木、沖縄のような温かい地域で見られるタブノキが混在して生息しています。また、オキタンポポのような固有種やホタルカズラという希少種も金光寺山では見られます。企画展実施期間である4〜5月はそれらの花が見ごろでした。
寺社がある山ということでご神域として扱われ、過度な開発を免れたことにより隠岐を特徴づける植物たちが生き残ったようです。その金光寺で小野篁さんや後鳥羽上皇が過ごされた痕跡が残っており、隠岐の成り立ちが独自の生態系や人の暮らしとつながっていることを感じることのできる良い機会となりました。
スタッフ向け学習会
4月18日(金)にNPO法人隠岐しぜんむらの深谷さんによるスタッフ向け学習会を開催しました。来館者に展示の解説をする職員が企画展の理解を深め、よりよい解説ができるような機会となりました。学習会後の開催期間中には、毎日午後4時から行うEntôWalkでの解説に活用できました。
展示アンケートからは、来訪者は海士町民や島外からの観光客がメインであり、20〜60代の方々から金光寺山の地質・生態系、歴史・文化について知れたという回答を多くいただきました。また、「固有種を知って島内を巡ると見え方が変わりました」、「長く住んでいる海士町ですが、知らないこともあり、新しい目線で景色や暮らしを楽しめると思いました」などという感想もありました。
隠岐ジオパークのサイトそして海士町の財産として未来に残していくため保全活動への意識も求められます。島内外の方々にこの企画展をご覧いただくことで、今までとは違う視点での海士町の新たな発見につながるきっかけとなりました。観光的な面だけではない海士町の魅力や価値を知っていただけたと考えられます。
今後もEntôジオラウンジを含む隠岐ジオパークの拠点施設では隠岐の価値と魅力が分かる展示やイベントを実施しますのでぜひ来てくださいね。