布施の大山神社

布施の山祭りの舞台として知られる大山神社ですが、ご祭神である大山祇神(おおやまづみ)を祀ったのは江戸中期で、祭りは江戸初期の記録があり、それよりも遥か昔から行われていたと考えられます。神社でありながら社殿は無く樹齢およそ 600 年の御神木の大杉が鎮座しています。
布施の山祭りは、毎年四月の第一土日(以前は初子の日と翌丑の日)の二日間にわたり、大山神社祭礼が行われます。ただし、4 月 1 日が日曜日の場合は 3 月 31 日から行われ、昔は陰暦二月の初丑の日に行われていました。
祭りの一日目は『帯裁ち(おびたち)』といい、地区の若者 15~30 名が『帯裁ち人』となって山に入り、御神木に巻き付けるカヅラ(サルナシ)を伐り出します。また、大山の神霊の依代となる榊の木一本を切り出し、二本の横木を足して駒のようにロープで組んで『祭り宿』となる春日神社へと持ち帰ります。その際、地区のあちこちで「 榊捲くり(さかきまくり)」というお払いの儀式を行います。神社に着くと来春までの一年間、境内に立てておき神宿であることを示します。
二日目は、御神木にカズラを巻くため、着物の帯に見立て『帯締め(おびじめ)』と呼ばれています。前日、山より伐り出した帯(カヅラ)を御神木に繋ぎ、『帯締め人』となった若者が、木やり歌に合わせて激しく揺さぶりながら踊った後、神木に七回り半巻きつけます。水田の耕作が殆ど行われなかった布施は、麦、ソバ、粟などの食物の全てを、奥山を開墾しての牧畑耕作に頼らざるを得ず、耕作に最も必要な水の精霊である龍神及び隠岐国鎮護の神霊座ます大山(摩尼山)の遥拝(ようはい)所として、南ノ谷の老杉に大山神の神霊を勧請(かんじょう)して村の繁栄、五穀豊穣、火災不来を祈ります。明治期以前の大山祭礼は村内に移住の法印山伏によって行われていました。